無意識にできることを増やすということ

人間の成長には限界はないが、「意識して何かをやる」ということには限界がある、という話をします。

私はピアノを弾く人です。ピアノは基本的に練習すればするほど上手くなりますが、それにはコツがあります。
片手ずつ何度も何度も練習し、手に指に動きを覚えさせることです。
そして、楽譜を見ながら、片手でその動きがなめらかにできるように仕込むことです。
次に、それを両手でやるわけですが、そうすると一気にうまくいかなくなります。
それは、結局、まだ意識しながら弾いているからです。楽譜を見て、こういう動きをすればいいんだな、そして指をその通り動かす。
ということをやっている段階では、まだまだうまくその曲を弾きこなすことはできません。
両手で練習をすると、おのずと、意識しているのはどちらか片手になります。すると、もう片方は無意識の状態だけれども動いている、という状態になります。
はじめは無意識状態だとうまく動いてくれません。しかし、何度も何度も練習しているうちに、無意識状態でもきちんと意図したとおりに動いてくれるようになります。
そして、それを両手に対して仕込みます。
簡単に言うと、それで一曲を弾きこなすことができる状態になります。

ここまでいけば、指が勝手に動いてくれるようになります。
ピアノの練習ではどんどん新しい曲を練習しますが、それはありとあらゆる指の動きを無意識に動くようにするよう体に覚えさせるためです。
そうすることで、色々なフレーズを身に着けることができ、アドリブができたり、応用が利くようになります。
それらは無意識でできることであるため、苦労する必要がなくなります。頭で「ここではドファラ、つぎはシレソ」みたいに考える必要なく、指が動くのです。
そのために様々な曲を練習します。

さて、仕事にプライベートにこの考え方を応用するとどうなるか。
例えば営業トークが上手くなりたいという場合。
何度も何度も話してみて、試してみて、自分の身になることをしてみること。
雑談のネタが無意識にいくらでも出てくるようになるにはどうするかを考えて情報収集したり、目の前のものごとからネタを引き出す練習をする。
相手の名前がそらで言えるように、何度も〇〇さんは~と話の中に登場させてみて、しっかりと相手の名前を口に定着させる。
良いことは口に出してみる、何度か喋ってみる、プレゼンの練習をしてみる、録音してみる。
口に定着させる、というのは大事なことだと思います。

これは、ピアノにおける指練習と同じです。

心地いい会話ができる人から商品を買いたいですよね?とするのであれば、
相手に親しみをこめた口調で安心感を与える会話を心がけてみる。
そして、そういった基本的で大事なことが無意識でもできるようにする。
時々は意識して、それができているかを検証したり、ちょっと変えたり改善したりしてみる。
そしてより良い口の動き・顔の表情を無意識にできるようにすりこむ。

もし技術者なら、何か調べ物をする時に、良い検索先を持っておく、人を知っておく、仲良くなっておく。
ある人に連絡を取ること、電話したりメッセージを送ることが無意識でもできるようになるように。
習慣にしておくということと同義の面もあります。
分からないことがあった時に、ネットで検索するのではなく、仕様書をしっかり読んでみる。
より根本から理解するような行動を指針にする。
なかなか高いスキルを持つ技術者の行動を「無意識」という言葉で説明するのは難しいのですが、
素晴らしい技術者が全てを意識して行動をしているわけではなく、無意識に体を預けて、仕事を遂行している瞬間は沢山あるはずです。

議事録を書く、話す、聞く、すべてにおいて、高いレベルのことを、無意識でできるまでに習熟するという修練が、
あなたを高みに連れて行ってくれます。

私もこのような文章を毎日書くようにしていますが、こういった文章はもちろん考えて書いているんですが、
瞬間瞬間は小さなテーマを与えられた私の脳みそが勝手にそれに対応したアウトプットを作り出して、文章が出来上がっているのです。

習熟したいこと、それを無意識にできるようになるまですりこみ、習熟するという意識で、
これから向き合ってみてはいかがでしょうか?